The Matrix:Path of Neo

タイトル

The Matrix:Path of Neo / マトリックス:パス・オブ・ネオ

メーカー(公式サイト)

アタリ / アタリジャパン

ジャンル

アクション

発売日

2005/12/22

フォーマット

PS2,Xbox,PC




―せっかくだから俺はこの青の薬を選ぶぜ

『The Matrix:Path of Neo(以下パスネオ)』は映画マトリックスシリーズを題材にした3Dアクションゲーム。
前作『ENTER THE MATRIX』が外伝扱い(リローデッドの裏の話)だったのに対し、
パスネオはタイトルの通り、主人公ネオの視点で純粋に三部作をゲーム化。
であるからして、登場人物が本編の脇役ばっかりだった前作と違って
今回はちゃんとアンダーソン君はもちろん、トリニティもモーフィアスも登場するし、
エージェント・スミスとのバトルもウザいぐらい楽しめる。
しかも映画の名シーンがそのままムービーとして流れるので弥が上にも盛り上がるってもんだ。
これぞファン待望の一作だね!
……なんて、そんな簡単にいかないのが世の常。
はっきり言ってしまうと、あまり良い出来とは言いがたい。
とはいってもつまらないって程ではないし、クソゲーでは断じてないと思うけど、
なんというか色んな意味で中途半端。
どこがどう中途半端なのかを以下に書き記す事にする。

◆中途半端その1『ストーリーが中途半端』

確かに三部作をきちんとなぞってはいるし、地下鉄のホームでのバトルとか100人スミスとか、
そういう名シーンの数々は一応再現されてはいるのだが、
「ネオの視点」にこだわりすぎたせいでモーフィアスの高速道路での名勝負や
現実世界のザイオン攻防戦のような名場面がバッサリ切られてしまい、
それによってネオのバトルがあまりないリローデッド・レボリューションの話が非常に薄いものとなってしまっている。
終盤なんてアーキテクトに会った次のステージでいきなりラストのスミス戦という有様。
要するにレボリューションズの話は最後だけ。
これで「三部作をゲーム化」と銘打つのはやや詐欺臭いと感じざるを得ない。
更にステージを水増しする為か、途中でわけのわからないオリジナルエピソードがやたら挿入されるのもちょっと…。
個人的にオリジナルエピソードであっても面白ければ無問題と思っているし、
現に無印とリローデッドステージの間に挿入される、
真実に気付いたマトリックス住人に焦点を当てたアニマトリックス的な番外編は良いと思ったが
終盤のメロビンジアンの館でのアリス・イン・ナイトメアもどきの迷宮ステージはやめて欲しかった。
昆虫人間と戦うアンダーソン君…。火が弱点!とか言われてもなぁ…。
これもひとつの可能性、なのだろうか。

それともうひとつ。このゲームはラストが映画とは全く違う。
流石にゲームの面白さを損なうひどいネタバレになってしまうので詳細は割愛するが、
これに関してはご丁寧にも監督であるウォシャウスキー兄弟がラスボス前にいきなり登場して
何故ラストを変えようと思ったかを説明してくれるんだけど、正直これも中途半端。
一種のパロディのつもりなんだろうけど、突き抜け切れてないのでハズしちゃった感が漂う。
まあ、○○○が○○して○○○○○になる姿はある意味必見といえば必見であるのだが…。

◆中途半端その2『本編映像が中途半端』

目玉のひとつらしい、本編映像を使ったムービーシーン。
その使われ方が話の流れに沿って使われるわけじゃなくて
ほとんどがダイジェスト(要はあらすじ紹介)として流されるので、
映画観てない人には全く内容がわからず
観た人にとってはぶつ切りムービーなんか改めて見せられてもって感じでいかんともしがたい。
ちなみに実写ムービー部分はオリジナル音声だが、
それ以外の部分(ポリゴンムービーやゲーム中)は新録で、声も映画のキャストとは異なる。
とはいってもこれに関しては流石に文句付けてもしょうがないし
新キャストによる演技も全く違和感はないので問題ないと言って良い。
中には気付かない人もいると思われる。
ただ欲を言えば日本語版は吹替にして欲しかったというのはある。

◆中途半端その3『ゲーム的に中途半端』

肝心のアクションゲームとしてはどうなのかというと、これはそう悪くない。
グラフィックは割と綺麗で難易度は高すぎず低すぎず、
「マトリックス避け」「銃弾止め」「壁走り」といった定番アクションも一通り出来て、
多対一のバトルの快感も味わえるので"ネオになりきる"という意味ではなかなか高水準。
ただ、銃撃戦が異常にやりにくくて全然楽しめず(弾も節約しないとすぐなくなる)
△×同時押しみたいな人間工学的に優しくないコマンドが満載でお世辞にも操作性良いとは言いがたいのが難点。
というかこのゲーム、右手を不自然に酷使させ過ぎ。
デフォルト設定(設定1)の
「R1=銃撃 R2=ターゲットロック 右スティック=ターゲット切替」 なんて正気の沙汰とは思えない。
個人的には□で銃撃出来る「設定3」がオススメ、いや一番マシだと思う。
設定2だと頻繁に使う技が○+□同時押しというハラスメント行為があった気がする。
あとターゲットロックは「切替」推奨。
「固定」はしょっちゅうR2ボタン押さないとタゲが外れる鬼仕様。
とにかく操作に関しては完全に調整不足。
そのせいで理不尽に難易度の高い箇所があってイライラする。

ステージ構成がどれも似たり寄ったりなのでダレやすいのも痛い。
特に、あからさまな水増しが目立つ後半以降それは顕著。
序盤のカンフーを修得するトレーニングミッションがバリエーション豊かで楽しかったりする。
アニメかぶれの変な格好でカラテをマスターしたり、片言の日本語喋る幽霊と斬り合ったり、
内容的には本編とは全然関係ないけど。
ボリューム的にもやや物足りず、だいだい10時間もあればクリア出来てしまうので
コストパフォーマンスは決して良いとは云えない。
一応隠し要素もあるにはあるが…。

◆結論『原作のファンなら買い』

不満ばかり書き並べた感じだけど、最初に書いたとおりつまらないゲームというわけではなく、
「ネオになりきれるか否か」という意味では十分合格、簡単操作でスーパーアクションが決められるので
マトリックスキーなら楽しめるであろうレベルにはまとまっている。
ストーリー展開に不満が残るとはいえ、ところどころ光る演出もあってアナドレナイ。
中でも秀逸なのは「セラフ戦が上映されている映画館」でのセラフ戦。(上記右画像参照)
いわゆるひとつのメタ演出で、マトリックスキーなら燃える事間違いなし。
(映画を観ている)客の野次が自虐的で面白く、このステージだけ妙に気合入っている。
開発者にセラフ好きがいたんだろうか。
他のオリジナルエピソードもこれぐらい気合入ってれば良かったんだけどね…。
まあとにかく、セラフステージは一見の価値アリです。
というかこのゲーム、プレイするより隣で見てる方が楽しい気もする。
接待用に良いかも知れない。
それだとどうせなら対戦したかったのがホンネだけど。

次回作がもしあるのなら、三部作(+α)を完全網羅した「マトリックス・トリロジー完璧版」を期待したい。
いっそGTAタイプの箱庭アクションにしちゃうのもアリだと思った。
ロックスターに「GTA:The Matrix」とか作らせてもいいかも知れない。
主人公はマトリックス住人のギャングで、ギャングスタにのし上がりつつ世界の真実を知るという話。
売れる。


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